Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “さて七月”
 


今年は何ともキリがいい。
いや何がって、七月の一日は月曜日なので、
海の日が案配のいい、七月ど真ん中の15日になったし、
夏休みまでのカウントダウンもしやすいし。

 「…お前、案外と子供みたいなことも言うんだな。」
 「ルイこそ、俺んコト何者だと思ってやがる。」

その七月に入ったというに、
梅雨を引きずってのこと曇天が多いのも相変わらずだし。
体育の授業ではプールが始まったけど、
いくら暑くても水温はぎりぎりまでしか上がらないから、
最初に浸かるときは凄い冷たいし。

 「俺らも苦労したけどサ、
  去年とか今年とか、
  水が要る時期にからっからに乾いてたり、
  陽あたりが要る時期に大雨だったりしたもんだから。」

アサガオとかヒマワリ育ててる一年や二年が大変そうでなと。
昇降口まで来てくれた葉柱のお兄さんへ、
校門までのゆるやかなスロープを下りつつ、
そんな他愛ない話をするところなぞも、
物言いは微妙に子供らしくないかもだけれど、

 “何の、
  アベノミクスに踊らされた投資家がはしゃいだおかげで
  先月は小遣い稼ぎが大変だったとか、
  参院選挙戦が始まるからか、
  街宣車もどきの“よろしく”カーがもう走り回ってて
  うるせぇとかって話よか、ずんと罪がねぇしな。”

もしかせずとも場所柄を考えてのことだろうが、
いかにも子供らしい話題なだけ、こちらも相槌が打ちやすいと。
バイクの走行風除け、
蒸し暑い中でも長袖のタンガリーのジャケットを羽織っておいでの
ちょいと恐持てなお兄さんが苦笑しておれば。

 「あ、葉柱さんだvv」

来たときには見かけなかった小さな坊やが、校門のところに立っており。

 「なんだセナ、まだ進の奴 来ねぇのか?」
 「うん。」

はいというお返事と同じほどくっきりと元気よく、
大きく頷いて肯定した小早川さんチの瀬那くんであり。
少し大きめらしい つば広の帽子が、
その所作に合わせて一瞬浮いたのが何ともあどけない。

 「フェンスに沿ってだけど、道の向こうまで見に行ったの。
  でも まだまだ見えなかったよ。」

てへと照れ臭そうにしていて、
葉柱が来たときは それで此処に立っていなかった彼なのだろう。

 「進がって…、あ…。」

この、それはそれは愛くるしい小さな坊やが大好きなお兄さんの進も、
自分と同じ大学生、
しかもしかも七月という前期終了期でもあるのだろから、
平日で昼が過ぎたばかりというこんな時間でも
成程、その身は空いてもいようが…。

 「この暑い中、ジョギングで迎えにくるとか?」

そしてバスか何かで王城大学へ戻るのかなと、
怪訝そうに首を傾げた葉柱だったのへ、

 「もっと涼しい話だぞ。」

セナくんではなく妖一くんの方が、
にんまりと…子供らしからぬ薄ら笑いを浮かべつつ、
そんな風に言い出して。

 「??」

まだピンと来ないのか、
涼しい?と、切れ長の三白眼を見開いた葉柱の耳へ、
妙に鋭い、きゅきゅきゅきゅきゅ…というタイヤの軋む音が響いて来。

 「ああ"?」

どこの無茶野郎だ、小学校の通学路で妙な運転してやがるのはと。
元・族のヘッドとは思えない、
まるきりPTA発言をした彼の視野へと飛び込んで来たのが、
緑の中を走り抜けてく……

 「おお、キューブってことは、あれ桜庭の車じゃね?」
 「そだね。」

こないだは おねいさんのだったけど、
きっとどっかでボディー擦ったりとかしたんだぜと、
至って平板な会話をしている小学生の可愛い子ちゃん二人の傍らで、

 「……あれって、まさか。」

やや呆然としている葉柱さん。
さすがにもはや坊やたちからのお返事は要らなんだけれど。
次に思ったのは、

 ・免許取れたんだ、信じがたいけど
   (マニュアル車でだろうな、きっと)
 ・秋の大会まで事故らなきゃいいが
 ・つか、桜庭の奴、どこまで面倒見がいいんだか

さて、この内のどれだったでしょうか?

 「全部だよ、全部。」

どこの教習所だ、こんな無謀をしやがったのはっ、と
色んな意味から胸が絞めつけられて、
何でだか涙目になってたりする葉柱さんかも知れません。(笑)





     〜Fine〜  13.06.30.


  *あんまり蒸し暑かったんで、ネタに走ってしまいましたよ。
   前にも進さんが免許取った話は書いたような気がしますが、
   オートマとかよりマニュアルの方が
   却って無難に操作できるんじゃあないでしょか。
   (あくまでも先進電気機器が鬼門なんだし)
   ただ、
   ちょっとそこまでなら
   “自前の足で走った方が早いな”とか言い出しそうで。
   恋人(になる予定なの)がセナくんでよかったねvv
   普通の彼女ではついて来てくれないぞ、清十郎さん。

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